太陽光発電を暮らしに活かす試み

 

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原子力発電所事故の際、会津美里町は震度5強の地震に襲われました。エネルギーをはじめとした暮らしのインフラで致命的な損傷を受けることに至らず、その点は大変恵まれていたと感じています。ただ、石油を中心とした燃料については、原発避難者の自動車に対する燃料補給や、避難所運営への燃料需要までもが逼迫する事態に至ってしまいました。

 幸いなことに、電力供給については、会津における送電系統に大きな被害は認められなかったことから、震災後も電力供給が途絶えることはありませんでした。

 地震や津波で大きな被害を受けた東北地方の太平洋側地域では、送電系統の被害および発電所の被災が起き、長きに渡り電力供給が途絶えたことは、被災地にとって必要な夜間の明かりの他に、暖房設備が運転出来ないこと、さらに情報を取得する機器が動かないことなど、大変な混乱を起こすことに至りました。

 ここ会津地方の電力供給が途絶えなかった要因は、水力発電所や地熱発電所など、自然エネルギー利用による発電施設の被災を免れたことから、電力供給源が確保されたことが大きいとされています。

 すでに自然による大きなエネルギーポテンシャルを持つこの地方は、奇しくも災害に強いことが証明されましたが、水力発電や地熱発電は、人々が気軽に暮らしに取り込むには、規模が大きすぎるハードルがあります。また、外部から供給をしなければならない化石燃料を利用するエネルギーでの混乱は、将来の化石燃料が枯渇する事態へ至ったとき、失われるであろう持続的な暮らしを模索する必要に一石を投じました。

 ここでは、より身近で、より実現性があるもの、そして、持続可能な暮らしを目指すことを目的とした、「太陽光発電の自家消費モデル」についての会員の取り組みを、ご紹介をいたします。

 

 太陽光発電の自家消費モデル

 

 太陽光発電と言えば、固定価格買い取り制度により電力会社に売電し、利用については、電力会社の火力発電などとミックスされた電力を利用するモデルが一般的です。

 ここでいう自家消費モデルは、太陽光発電による発電から消費までのすべてを自身で行い、足りない電力については今までどおり、電力会社から調達しようというものです。

 電力会社から買電せず、すべてを自分で賄おうという猛者もおりますが、太陽光発電は天気に左右されることから、どんな天候においてもすべてを自分で賄うことを目指すには、天気が良い時に発電した電力を多大に保管(蓄電)しておかねばなりません。

 また、電力をあまり必要としないときに天気が良いと、せっかく発電した電力をまるで捨ててしまうようなことが起きてしまいます。

 このように、太陽光発電による供給の調整を自身で行うことは不可能なので、災害時に電力供給が途絶えた際に最低限必要とする電力を賄う程度の発電を行い、日常の暮らしにおいて自家発電量以上の電力を必要とする場面では買電にて賄う、そんな、ゆるいモデルを目指しました。これでも、かなり心強い電力システムが構築できたと感じています。

 それでは、これから自家消費モデル(独立型太陽光発電)を作る際に必要な知識を記していきましょう。

 

直流と交流の話

 

 太陽光発電は、「太陽光パネル」により、発電を行います。

 太陽光パネルは、光を浴びると電力を発生させる素子の集合体で、そこから生まれる電力は「直流」の電力が生まれます。

 日常生活で用いる照明設備や冷蔵庫などの電力機器は、交流100Vでの利用が一般的です。太陽光発電を自家消費するには、これらの電力消費機器に必要な交流の電力に変換するか、電力消費機器そのものを直流で動くものにする必要があります。

 まず、話が簡単な「直流」の話から始めましょう。

 太陽光発電は、一時的に蓄電をさせないと、すべてお天道様に暮らしが左右されることになります。そこで蓄電に用いるのがバッテリーです。

 バッテリーは、セルと呼ばれるところに電気エネルギーである電荷を貯め、それ一方方向に流す構造をしています。一方方向に電気が流れるのが直流ですので、太陽光発電であられる直流電流を貯めるためにはバッテリーは必須のアイテムです。

 バッテリーといえば自動車用のものがポピュラーで、自動車の発電機も直流の電力を起こし、バッテリーに貯めたうえで、自動車の電気系統につながれた機器が直流のまま消費します。

 小型車では12Vのバッテリーが、大型車では24Vのバッテリーが使用されることが多く、この2種類のバッテリーは、数多くが販売され、地方でも手に入りやすくなっています。

 自動車の電力消費系統の代表的なものは、ヘッドライトやオーディオ機器などで、すべて直流機器として動作するものとなっています。近頃では、スマートフォンなどに充電するために、シガレットライター(12Vか24V)からスマートフォン充電電圧の5Vへ変換する機器もホームセンターなどで簡単に手に入ることから、利用する方が多くなりました。

 太陽光発電で用いる直流の電力を用いて自家消費するような形を目指す場合、自動車用の機器を暮らしで上手に活用することが最も簡単です。自動車用以外の直流用の家電機器という市場も存在しますが、あまり大きな市場ではないため、機器のお値段が高いのが実情です。

 一般の家庭で用いる交流機器を直流に改造して利用する方法もありますが、それは別項目でご案内します。

 

 次に「交流」の話をしましょう。

 交流というのは、プラスの電気とマイナスの電気が行ったり来たりするもので、日本の電力供給システムや一般の家電製品は、この交流を使っています。

 なぜ交流を使うかといえば、直流で用いるバッテリーは、その中身の電力量により電圧が高くなったり低くなったりすることが起きてしまい、不都合が生じることがあるからです。バッテリーに電気が残っていても、その量が少なくなると電圧が低くなってしまい、必要な電圧が取れなくなることも起きます。

 これでは利用に問題が発生するので、発電所は、需要に応じた発電を行い、一定(と言っても多少の電圧変動はありますが)の電圧で利用できるようにするよう、交流を用います。

 また、送電をする際、電圧が高ければ高いほど送電ロスが少ないことと、電圧の変換が容易なことも、交流を利用する利点として挙げられます。

 太陽光発電でバッテリーを介して交流で電力消費を行う場合、バッテリーと使用機器との間で、直流から交流に変換する機器を挟む必要があります。この機器のことをインバータと言います。

 インバータについては、あとで詳しく述べます。

 

 交流の消費機器については、実際に最後まで交流で電力消費をするものは、モーターなどのごく限られた機器です。ほとんどの機器は、機器の中で交流から直流に変換したうえで電力消費をします。ただ、機器により最終的に用いる直流電圧はさまざまで、交流機器を直流に改造する際は、そこに困難さが生じます。

 

太陽光パネル

 

 太陽光パネルとは、発電素子を集めたものであることはすでにお話しました。この素子に、真正面から強い光を浴びたとき、最大の電力量を発生させます。販売されているパネルにより、素子の組み合わせが異なり、発生電圧と発生電流が決まります。バッテリーの充電状態により、日が照って発電出来る状態でも回路を遮断して発電しないような状態にする際にパネルに発生する電圧を開放電圧と言い、発電した電力をバッテリーに充電するような負荷が生じている状態での電圧を最大出力電圧と言います。

 ここで大事なことは、太陽光パネルとバッテリーの間で充電をコントロールする機器であるチャージコントローラーが扱える電圧を考えるときに開放電圧を用いることです。

 太陽光パネルは、乾電池と同じように、直列でつなげば電圧を足したものになり、並列でつなげば電流を足したものとなります。

 本会で用いたパネルは、インターネットのオークションで1枚8000円程度で落札したもので、1枚で190Wの能力を持ち、最大出力電圧は38V、開放電圧は45V、電流は5.26Aのものです。ちなみに大きさは畳1枚よりも少し小さな程度です。

 これらの電圧値と電流値は、発電システムを設計する際に用います。

 太陽光パネルは、100Wから260Wくらいが、実際に使われるものとなるでしょう。これらの規格は、必要とする発電能力、電線の太さ、チャージコントローラーの扱える電圧、バッテリーの電圧、インバータの扱える電圧など、多岐に影響しますので、その原理を良く覚えておきましょう。

 

チャージコントローラー

 

 チャージコントローラーは、太陽光パネルとバッテリーをつなぐ電力機器です。バッテリーの状態を把握し、その状態に応じて太陽光パネルからの電力供給をコントロールします。バッテリーは中身に応じて電圧が変動しますので、バッテリーが満充電電圧(12Vのバッテリーのときは14.4Vに設定されていることが多い)となると、太陽光パネルから送られてくる電力を遮断し、バッテリーを守ります。満充電電圧に達していない時には、太陽光パネルからの電力をバッテリーに送ります。

 チャージコントローラーには、PWM制御のものとMPPT制御のものがあります。

 PWM制御とは、太陽が雲に隠れたり、鳥や木々の影が動いたりと、刻々と変化する太陽光パネルからの出力電圧を一定の電圧に保つことです。この電圧をバッテリーよりも高くすれば、太陽光パネル→チャージコントローラー→バッテリーという経路で電気が流れます。

 MPPT制御とは、電圧制御に加え電流も制御し、最大電力を取り出すための制御方式です。つまり、刻々と変わる発電環境から、いつも最大の出力を得るようにするものです。

 MPPT制御の方が、多少お値段が高いものの発電効率が良いので、こちらをお使いになることをおすすめします。

 

 チャージコントローラには、最大入力電圧と出力電圧、最大電流の規格があります。

 最大入力電圧は、太陽光パネルの開放電圧が、その値より小さくなければなりません。市販品では、100Vから150V前後のものが多く、例えば150Vの場合、太陽光パネルの例で出した開放電圧45Vのパネルを3枚直列につなぎ、135Vとして入力するというようになります。

 バッテリーを12Vのシステムとした場合、出力電圧は12Vで、例にお出しした190Wパネル3枚の場合、570W÷12V=47.5Aとなるので、最大電流は50Aが必要となります。24Vシステムの場合は、25A(25Aという製品は存在しないのでこの場合は30A)の規格が必要となります。

 

 太陽光パネルを並列につなぐ場合は、電流値が大きくなります。電線の太さは電流値と比例関係がありますので、電流が大きいほど太い電線が必要です。電線による損失を少なくするため、なるべく直列につないで電圧を高く、電流を低くするような配線を目指すことが肝要です。

 

バッテリー

 

 バッテリーにはいろんな種類があります。

 自動車用バッテリーは、鉛バッテリーと言い、蓄電する素子に鉛を用いたものです。鉛の表面積に応じて蓄電量が決まります。鉛は非常に重い金属です。自動車に積むバッテリーは、重量を軽くするほど燃費が向上するので、鉛をメッシュ状にして、軽量化が図られています。メッシュ状にすると、軽量化ができるものの、放電が早くなる欠点があります。自動車運転中は、エンジンの動力から発電が行われますので、初期のエンジン起動に要する電気エネルギーを満たせば、事が足りる設計思想になっています。

 太陽光発電で鉛バッテリーを用いる場合は、太陽が出ておらず発電しない夜間などに電力を使う必要があります。放電は、なるべく遅くする必要があります。船舶で用いるバッテリーは、沖で停泊するする際などに電力利用することを想定し、鉛を密にしたものを使用しています。こういうバッテリーをデュープサイクルバッテリーと呼びます。

 家庭で使用するバッテリーは、重量による損失をあまり考える必要がありません。ここでは、デュープサイクルと呼ばれる鉛バッテリーを選びたいものです。

 この他にも、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーなどの市販品が存在します。多少高価ですが、充電効率が高いバッテリー機器の利用も良いです。

 ほとんどのバッテリーは、直流12Vで作られています。容量を増やすには直列や並列で接続します。

 直列での接続は簡単ですが、並列での接続は、各バッテリーの電圧(充電量)が異なると、接続した瞬間に大きな電流が流れ同じ電圧にしようという力が働きます。このときに過大電流が流れると、一瞬にしてバッテリーが劣化することがあります。

 並列接続をする際は、電圧を計測してほぼ同じ電圧であることを確認してから行うようにしましょう。

 本会の場合は、2つ直列に接続する24Vシステムと、4つ直列に接続する48Vシステムを作成しました。

 

インバーター

 

  インバーターは、直流の電流を交流に変換する機器です。

 交流の電流は、サインカーブ(正弦波)と呼ばれる滑らかで振幅と周波数が一定のものが、品質の高い交流とされています。直流から交流に変換するインバーターは、その内部でこの正弦波を作り出しますが、品質の良い交流を作る機器は、高価なものになります。

 品質の悪い交流はどんなものかといえば、パルス波と呼ばれる矩形の波の形を作り、擬似正弦波などと呼ばれるものを作るものです。こちらの機器は、安価なものが多くなっています。

 では、どんな場面で品質の高い交流が必要なのかといえば、売電のために電力会社の送電網に流す際は、品質の悪い交流波を流すと全体の電力網に悪い影響があります。電力会社へ売電する際には、この品質を厳しく正されます。売電に使われるインバーターはパワーコンディショナーと呼ばれることが多いですが、電気のコンディション(=品質)を高くするために、かなり精度が高いものが要求されます。

 自家消費の場合は、自分で使う電力の品質は、自身の納得が行けば良いことです。白熱電球などは、50Hz(1秒間に50回の変動)で光源のOn-Offが繰り返されるので、人の目には交流であることすら気づきません。ましてやそれが矩形波か正弦波という違いなど、全くわかりません。近頃増えたLED電球は、最終的に光る発光ダイオードは直流でしか動作しないものなので、やはり矩形波か正弦波かは、あまり関係ありません。

 交流電流を交流のまま最終消費するものには関係があることになりますが、信頼性を必要とする医療系の精密機器などを除いては、あまり神経質になる必要はありません。

 

 次にインバータの規格について述べましょう。家庭で使うインバータは100Vの交流を出力させるもので、出力される交流の消費電力を考えたうえで能力を検討する必要があります。また、使用機器の使用頻度も考慮する必要があります。

 例えば消費電力40Wの照明を5灯つけるとした場合、最低200Wの能力が必要となります。

 インバーターを使う場合、短時間の利用ならばこれで問題ないのですが、長時間(30分以上?)使い続ける場合は、直流から交流へ変換する回路が熱を持ちますので、より大きな能力のものを使う必要があります。経験則では、2〜3倍程度、つまり500Wくらいの能力は欲しいものです。

 また、動力としてモーターを使う冷蔵庫や洗濯機などの機器は、電源が入る時に一瞬大きな電流が流れることから約5倍から8倍程度の電力を必要とします。インバータには、最大出力能力も示されていますので、その点に注意しましょう。

 

直流のままで消費する場合

 

 家電機器は交流で電源を取得するも、内部で直流として消費するものが多いことをすでにお知らせしました。

 例えばLED電球を考えてみましょう。市販のLED電球は、ソケットの内部に交流100Vから直流へ変換する電気基板が入っています。いくつか分解を行い、光源となる基板だけを取り出し、直流の入力電圧を計測してみると、およそ24Vで動作するものとおよそ50Vで動作するものが大半でした。

 交流100Vから直流24Vあるいは50Vへ変換する基板は、相当多くの家電製品で使用されるものなので、汎用のモジュールを使って家電を販売しているメーカーが多いことから、こうなっています。この事実は、直流24Vあるいは48Vの独立電源系統を構築すれば、そのまま電力消費が出来る可能性を与えてくれます。

 部屋の天井に取り付けるシーリングと呼ばれるLED照明の内部も、24Vと50V程度のものが大半でした。

 そこで、照明器具から交流→直流変換の基板を取り外し、途中にスイッチを挟みバッテリーから電流を供給する回路を作成してみました。

 バッテリーは電圧変動がありますので、その中身により明るく光る時と暗くしか光らない場合がありますが、日没から数時間は、必要な明るさを満たせてくれています。天候が悪くてバッテリーの中身が少ないときは、使用をあきらめ、もともと電力会社からの電力で光る照明を使えるよう、こちらは従来のものをそのまま残してあります。

 使用しての実際として、暗くて電力会社とつながっている照明を用いるのは、月に2日から3日程度しかありません。

 

 その他にスマートフォンなどの充電に使うUSBコンセントの例をあげましょう。

 USBコンセントは直流5Vが規格です。1Aまでのものと2Aまでのものが多く使われています。

 自動車で用いるシガレットライターからUSBに変換する機器がホームセンターやカーショップで販売されており、入力は24Vと12Vのものがあります。バッテリーの電圧に合わせてこれらを接続すれば、スマートフォンやタブレットなどの電源は簡単に取得できます。

 デスクトップコンピュータやノートPCは、内部で直流12Vと5V、3.3Vを使用します。ACアダプターを使うものは、直流19V〜24V程度の出力のものを使い、内部で必要な電圧に変換しています。交流100Vの電源の場合は、コンピュータの電源が直流12V、5V、3.3Vを出力するようになっています。

 コンピュータ専門店に行くと、直流19Vから28Vまでの入力で動作する機器が販売されているので、例えば24Vのバッテリーシステムからコンピュータに使うことができます。

 

 直流のまま電力を使用する際は、バッテリーの中身が少なくなったときの対応を考えて置く必要があります。そういう際は、既存の商用電源に切り替えることができるようにしておきます。

 

商用電源切替機

 

 商用電源切替器という便利な機器が販売されています。

 これは、インバータからの出力と商用電源を接続しておき、通常はインバータからの出力を優先して使用し、バッテリー電圧の低下によりインバーターからの出力が途絶えたときに、商用電源に切り替えるものです。

 切り替え時に、ほんの一瞬だけ電力が途絶えますので、瞬間停電でも影響がある消費機器には、注意が必要です。

 本会では、消費電力約240Wで1日中電気を消費する浄化槽のブロワーと呼ばれる送風機器の電力に使用してみました。

 商用電源を夜22時から朝8時までの電気代が安くなるプランを使用すると、約80%は夜間電力しか使わない結果となりました。

 

 

 2016年4月からは、電力の自由化が行われるので、夜間に電気代が安くなるプランも充実します。

 これらの知識を活用し、うまく電力消費プランを設計すれば、環境に優しく、低コストで、必要となる商用電源も低コストで調達しながら、持続可能な暮らしを目指すモデルに大きな貢献をするでしょう。

 

 設計時に不明なことがあれば、お問い合わせの欄よりお気軽に連絡ください。